前号では、これまで変えられないと思われていた喜怒哀楽の反応を
変えられることについて書かせていただきました。このカウンセリ
ング方法を、私たちカウンセラーが現場でよく使うのは、PTSD
(心的外傷後ストレス障害)の方に向き合う時です。
PTSDになると、かつて経験したショックな状況をフラッシュ
バックしたり、ある特定の場所に行くことや、特定の行動ができなく
なるなどの症状が出ることがあります。特にそのフラッシュバックの
原因になるのが、「トリガー(引き金)」と呼ばれる「きっかけ」に
当たる刺激です。
震災で被災された方々の中には、バスが近所を通って家が少し揺れたり、
壁が「ピシッ」と音を立てたりすると、それがトリガー(引き金)と
なって、「地震では?」と感じ取り、震災当時のひどい状況を瞬間的に
思い出します。
つまり、
・バスによる揺れ → ひどい状況(つらい・悲しい)
という反応が染み付いてしまっているのです。
これに対して、
・バスによる揺れ → お風呂に入っている状況(心地良い・リラックス)
という刺激を記憶に上書きしていくと、PTSDの症状が軽ければ、
「バスによる揺れ」というトリガーによって引き出される感情は
「お風呂に入っている心地良さ」になります。
また、症状が重い場合でも、反応が中和されたり、軽減されるように
なります。さらに、数回繰り返せば、日常生活に支障がない程度に
症状を軽くすることもできます。
※心理的痛みに関しては、消し去ることが、その人の人生において
最善ではない場合もあります。
(次号に続く・・・)