皆さんは、守破離(しゅはり)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
日本での茶道、武道、芸術等における師弟関係のあり方の一つで、
人が成長する過程を表したものだそうです。
守:決められた型や、指導者の教えを「守」って、それを繰り返して、基本を習得する段階。
破:守で身につけた基本をベースにしながら、自分なりの工夫をして、
徐々に基本を「破」り発展する段階。
離:型や教えから「離」れて、新たな型を創造したり、独自の境地を拓く段階。
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学生は「守」を問われ、社会では「破」を問われる
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学校の勉強を考えてみてください。
単語を覚えて、文法を覚えて、解法パターンを覚えて、
これは、「守」の段階だと思います。
学校の勉強や入学試験は多くが「守」を問うものであり、
自分なりの工夫をして、基本を「破」るということは
あまりしてこなかったのではないでしょうか。
しかし、社会人になると、今まで「守」を求められてきたのが、
「破」を求められることも多くなってきます。
若手社員が「自分で考えることをしない」「工夫できない」というのは、
今まで「破」の考え方をあまりしてこなかったので、
ある意味では当然のようにも感じます。
だからこそ、自分なりの工夫をして、成長する(させる)ことも必要になってきます。
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「破」への成長を阻むダブルバインド
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ダブルバインドとは、二重拘束という意味で、
二つの矛盾したものに挟まれた状態を意味します。
ダブルバインドは、上下関係がある場合に起こりやすくなります。
例えば、「言われた通りにやりなさい」と「少しは自分で考えてやりなさい」
の両方を上司が部下に言っている場合、
本人が「言われた通りにやること」と「自分で考えてやること」を
理解していない場合、ダブルバインドの状態となり、混乱してしまいます。
また別の例として、上司が「意見を出し合おう」と言い、
部下が意見を言ったら「それは難しいな」など、
すぐ否定的になってしまうということがあります。
上司としては、当然の判断を言っただけなのですが、
部下からすると、意見を出したのにも関わらず否定的な回答をされると
今後意見を言いづらくなりますし、考える気が失せたりします。
それでは、「もう考えたくないな。言われた通りやればいいや。」
となり、「守」のまま停滞してしまうのも仕方がないように思います。
ブレインストーミングという言葉は皆さんご存知かと思います。
アイデアを生み出す手法ですが、ブレインストーミングには、
否定しない、判断しない、結論を出さない、といったルールがあります。
「守」から「破」へ成長する(させる)には、
ブレインストーミングのような工夫も必要なのだと思います。
ちなみに、自分の意見を言う場合は、“私”を主語にして、
否定感を少なくするという方法があります。
「あなたの意見は、難しいと思う」と言うより、
「わたしは、それは難しいように思う」と言った方が、
受け取る側は、否定された感覚は少なくなります。
若手社員や部下・後輩は、ダブルバインドに陥りやすい立場にあります。
その立場の人が、自分でダブルバインドをどうにかするのは難しいものです。
回りが意図していなくてもダブルバインドの状態になっていることもあります。
ダブルバインドになってはいないか、抜け出すにはどうすればいいか、
考えてみてはいかがでしょうか。