服装の乱れ、昼夜逆転している、生活が不規則

生活の乱れが出てくるのはどうして?

服装の乱れや生活が不規則になるといった生活の乱れは、こころの病気をもつ人ばかりではなく、一般の健常者でもみられます。一概に、こころの病気が原因とは言い切れませんが、病気から生じる症状として現れていることもあります。
たとえば、うつ病の場合には興味、関心や意欲の低下が認められるため、身なりに気をつかう余裕がなくなり、服装が乱れがちになります。さらに、睡眠障害はうつ病によくみられる症状で、夜なかなか眠れず、日中はうつ病の症状である活動性の低下によって、ごろごろと寝床で過ごすことが多くなり、生活リズムが乱れがちになります。
うつ病の場合、うつ症状の改善に従って生活の乱れも改善しますが、最近若い人に多くみられる”非定型”うつ病の場合には、その主症状の一つが過眠であり、また薬の効果が不十分なことも多いため、しばしば長期間にわたって生活の乱れがみられます。また、”非定型”うつ病の特徴として、その時々の環境や状況によって気分が大きく変わります。たとえば、好きなイベントなどがあると一過性に気分や活動性が改善するため、周囲からは怠けと思われがちです。
一方、統合失調症の場合、生活の乱れは様々な理由から起きてきます。まず、統合失調症の場合でもうつ症状が出現することが知られています。再発の前ぶれ、幻覚妄想が激しくなる時期(急性期)、急性期が過ぎた後など、個人によって現れる時期も様々です。うつ病の場合と同様、興味、関心や意欲の低下に伴って、生活の乱れが生じます。
また、持続的な意欲の低下や感情の変化が乏しくなる陰性症状が統合失調症ではみられることがあります。なお、幻覚や妄想など、健康なときにはみられない状態が現れる陽性症状に対して、健康なときにあったものが失われる(意欲が低下する、など)状態を陰性症状とよんでいます。
陽性症状はしばしば急性期に顕在化しますが、陰性症状は持続的に出現します。急性期には幻覚や妄想にとらわれ、睡眠も障害されるため、当然生活は乱れがちになります。また、陰性症状があると周囲への関心や意欲が低下しているため、身なりに気をつかうこともなく、周囲への配慮もできなくなるので、持続的な生活の乱れにつながります。
また、治療に用いられている薬物によっては眠気が出てきたり、頭がぼんやりしたりするなどの副作用が生活の乱れを引き起こす場合もあります。

自分に生活の乱れが出たときはどうすればいいのですか

生活の乱れを生じている理由によって対処法は異なります。
たとえば、うつ症状が強いために生活が乱れている場合、それを正そうとすることが大きな負担を課すことになる場合があります。一般的なうつ病の場合、自責感が強く、日中ごろごろしていたり、身なりに気を配れない自分に対して失望し、自らを責めてしまうため、規則正しく生活することが逆に、うつ症状の増悪につながりがちです。
うつ病は「こころの風邪」ともいわれますが、”風邪を引いて39℃の高熱が出ている”ときと同じように、生活の規則化よりも休養が優先される状態と考えてください。統合失調症によるうつ状態のときは、エネルギーが低下しているため、なかなか思うように行動することができません。また、急性期には、幻覚や妄想にさいなまれ、頭の中は刺激過多な状況にあります。そんな中、生活の乱れにまで気をつかっている余裕はありません。ゆっくり休養を取ることが必要です。
一方、”非定型”うつ病の場合、過眠症状に対して薬物療法が奏功しないことが少なくなく、一般的なうつ病の治療指針である薬物療法と休養の組み合わせでは、いつまでたっても症状が改善しない場合があります。反対に、うつ症状がよほど悪くない限り、適度に運動したり、生活リズムを正していく努力が効果的な場合があります。
統合失調症の陰性症状のために生活が乱れている場合はどうでしょう。陰性症状も長い経過をとり、薬物に対する反応もあまりよくありません。生活の乱れは、たとえば仕事に就く場合など社会参加の妨げになるものです。しかし、自宅で一人で修正するのはなかなか容易でありません。デイケアや作業所など通所施設に通うというのはどうでしょうか。どこかに通うとなると、朝は起きなければなりません。交通機関を使いますし、デイケア・作業所の仲間とのつきあいもありますから身だしなみを整える必要もあるでしょう。こうしたニーズが生じると、動機づけもしやすくなります。また、デイケアや作業所でのリハビリテーション自体が陰性症状を和らげるとも考えられています。
生活の乱れが修正できない場合、私たちはついつい自分の外に原因を求めがちです。薬のせいで朝起きられない、家事をやる気がしない、そうした考えに傾きがちです。しかし、ちょっと思い返してください。何か楽しい出来事があるときには朝起きられるのに、面倒なことに取りかからなければならないときにはなかなか起きられない、といったことはないでしょうか。そのような場合には、必ずしもすべてが薬のせいとは言い切れません。
一方、ふだんは楽しいことであっても楽しめない、やる気がしない、起き上がれない、といったことであれば、精神症状のほかに薬の影響も考えられますので、主治医にその旨を訴え、よく相談してください。どんなときでも勝手に薬をやめてしまうことは避けてください。急にやめることで、もっとつらい症状が出現する可能性があります。

身近な人に生活の乱れがみられたときはどうしたらいいのですか

うつ病や統合失調症の急性期には、あまりにつらそうなため、急性症状の激しさに目が向き、生活の乱れはあまり気にならないものです。しかし、急性期を過ぎても生活の乱れが続きますと、何か一言言いたくなるものです。しかし、うつ病の場合、不安感や悲しい気分がある程度改善しても意欲の低下が持続することが珍しくありません。
この時期は、気分はだいぶ改善しているにもかかわらず意欲が出ないために、家事や仕事に取りかかることができず、本人が焦ったり、自分を怠け者のように感じ、大変つらい気分を味わっています。そんなときに周りが本人の生活の乱れについて言及することは、本人の自責感を強めることにつながり、うつ症状の増悪を引き起こします。
統合失調症の場合も急性期の後に、うつ状態がみられることもあります。この時期はいってみれば激しい急性期の後の休息期ともいえる時期で、心身ともに休息を第一に考えるべきです。しかし、周りからしてみると、幻覚や妄想が終息し、病状が回復しているように見えるにもかかわらず、ごろごろしていたり、だらしない服装をしていたりするので、その理由がわからず、ついつい批判的な言動をとってしまうものです。
いずれの場合も焦らず、見守ることが大事で、とくにうつ病の場合は、本人が焦りから無理をして、早く仕事や家事に取りかかろうとする傾向があるので、むしろブレーキをかけるくらいが望ましいといえます。
一方、”非定型”うつ病の場合には、すでに記したとおり、薬物の反応が悪く、休養を取り続けても一進一退でなかなか改善の糸口が見えません。一般的に自責感がそれほど強くないためか、日中ごろごろしていても自分を責めたり、そのことで必要以上に落ち込むことがないため、自らこの事態を打破しようとする動きが見えにくいものです。ある程度日中の活動と生活リズムの規則化を図らなければなりませんが、しかし、そのことを本人にストレートに告げると、”つらさをわかってもらえない”と落胆したり、あるいは怒りを引き起こし、信頼関係にひびが入ったり、症状の悪化をもたらすことがあります。
本人自身が生活の規則化を図ろうとした場合には、支持的に接する必要がありますが、最初は非現実的な目標を立てるなどして、すんなりとは進まないことが多いので、一喜一憂しないで見守る必要があります。
統合失調症の陰性症状による生活の乱れに対しては、すでに記したとおりデイケアや作業所に通所するなど、生活の乱れを是正する方向への動機づけを図りながら進める必要があります。また、生活の乱れの中で修正すべき目標行動を一つにしぼって、具体的に進めます。たとえば、”朝早く起きること、散歩をすること”ではなく、”朝8時に起きること”あるいは”毎日30分散歩すること”のような目標設定を行います。また、うまくいったときは、その行動をほめることを忘れてはなりません。

(出典:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」より)